矯正治療
そもそも矯正歯科ってなに?
矯正歯科とは、歯の矯正治療を行う診療科のことで、歯に装置をつけて少しずつ歯を動かしていき、歯並びの不正や噛み合わせの不正を正常な状態に近づけていきます。矯正治療のイメージとしては、いわゆる、歯並びを整える「見た目の改善」をして心理的なコンプレックスをなくす、ということを挙げる人が多いかもしれません。しかし、きちんと噛めるようにしたり、歯を健康にするための「噛み合わせを整える治療」を行うことで、体を健康にする効果まであるため、矯正治療は「心身を健康にするための治療」であるとも言えます。
なぜ、歯並びは悪くなる?
歯並びが悪くなる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。歯並びが悪くなる原因としてよく耳にするものに「日本人は顎が小さいから」ということがあります。でも実はそのような遺伝的な骨格というよリは、悪い生活習慣などが原因で歯並びが悪くなっていることも多くあるのです。 例えば次のようなものが歯並びを悪くしてしまいます。
1.日常的な癖
歯並びを悪くする大きな原因となっているものに、「癖」があります。成長期に歯や顎に力をかけ続けるような癖があると、歯並びや顎の成長に悪影響を与えてしまいます。例えば、指しゃぶり、唇や爪を噛む癖、舌の癖(歯を押したり、付き出す)、頬杖をつく癖などです。
2.むし歯
乳歯のむし歯がひどくなり、早く抜かなければならなくなると、後ろに並んでいる歯が前にずれてきてしまい、抜いた後に生えてくるべき永久歯の生える場所がなくなってしまってズレた場所から生えてきます。また、永久歯のむし歯も穴が開いたまま放置していたり、むし歯で抜いたまま放置していると、周囲の歯がズレて歯並びが崩れてしまいます。
3.口呼吸
アレルギーや鼻炎などが原因で鼻から呼吸ができない場合、口で呼吸することになります。そうすると、口で呼吸がしやすいように舌が下方に落ち込み、通常舌に押されることによって行われるべき顎の成長が行われず、顎が未発達となり、歯並びが悪くなります。
4.噛み方の問題
やわらかいものばかり食べていて、きちんと噛まずに飲み込む、ということを子供の頃から繰り返していると、正常な歯並びの形成や顎の発達が行われず、歯並びが悪くなります。
5.小帯の異常
小帯(しょうたい)というのは唇や頬、舌の裏側についているスジのことですが、これが太かったり短かったりすると、歯並びに影響を与える原因になります。
6.遺伝的なもの
顎の大きさや形、歯の大きさなどというのはある程度遺伝で決まっている部分もあり、それが原因で歯並びが悪くなることもあります。
矯正が必要な場合は?
矯正が必要となる不正咬合には次のようなものがあります。
叢生
叢生というのは歯並びがガタガタに重なっている状態の歯並びのことで、「乱ぐい歯」とも呼ばれます。ちなみに八重歯も叢生の一種です。歯が重なっていることで、歯の清掃が行き届かず、むし歯や歯周病になりやすいため、歯の寿命が短くなりやすいと言えます。歯の並ぶスペース不足によって起こり、子供の場合は矯正装置で歯並びを拡大して並べられる場合もありますが、成長期を過ぎている場合には、通常どこかの歯を抜いてスペースを作り、並べていきます。
上顎前突
上顎が前に出ている歯並びで、「出っ歯」と呼ばれるものです。上顎が過剰に成長している、または下顎の成長不足、上の前歯が大きく傾いている場合にこのように呼ばれます。口が閉めにくいため、口内が乾燥し、口臭がひどくなったり、むし歯や歯周病のリスクが高まります。成長期の段階では顎の成長をコントロールして矯正が可能ですが、大人になってからだと抜歯をして矯正するのが一般的です。
下顎前突
「受け口」や「反対咬合」とも呼ばれているもので、下顎が上顎よりも前に出ている状態です。発音が不明瞭になりやすく、特にサ行やタ行が発音しづらくなります。下顎前突の兆候が見られたら、なるべく早めの年齢からの治療が望まれます。治療法としては子供の場合、下顎の成長を抑制する装置、上顎の成長を促進する装置をつけたり、マウスピースで上下の噛み合わせの関係を修正したり、というような治療を行い、大人の場合は軽度の場合であれば通常の矯正治療、ひどい場合には骨を切断して顎を引っ込めて矯正治療を行うこともあります。
開咬
上下の歯をかみ合わせた時に、前歯に隙間がある噛み合わせで、特に発音に影響が出て滑舌が悪くなりやすくなります。子供の時から治療を始めると、顎の成長のコントロールで矯正できる場合が多いですが、大人になってからでは顎の外科手術を行った上で矯正しなければ治らない場合もあります。
矯正治療の種類
マルチブラケット法
もっともよく知られている矯正法で、歯の表の一つ一つにブラケットという装置をつけてワイヤーを通す方法です。金属ブラケットと審美的な透明(白色)ブラケットがあります。応用範囲が広く、様々な不正咬合の治療に対応できます。
裏側矯正(舌側矯正)
歯の表側でなく、裏側にブラケットをつける矯正法です。外側から見えないので矯正装置を見せたくない人に向いている治療法です。ただし、違和感を強く感じたり、金額が高めなのがデメリットです。
セルフライゲーションブラケット矯正
見た目はマルチブラケットと同じような感じですが、ブラケットとワイヤーの摩擦が少なく、よりスムーズに歯を動かすことができるため、治療を早く終わらせることができます。料金はマルチブラケットよりも高めになります。
マウスピース矯正
歯の表面に装置をつけることなく、着脱式の透明なマウスピースをはめることで歯を動かしていきます。非常に薄いため、周りの人にも気づかれにくく、食事の時には外せるのが最大のメリットです。ただし、比較的軽めの不正咬合にしか対処できないというようなデメリットもあります。
部分矯正
プチ矯正、MTMなどとも呼ばれているもので、歯並びが部分的に悪い場合に行います。短期間で終わらせられ、費用も低く抑えることができます。
矯正歯科の一般的な治療手順
- カウンセリング
どのような治療が必要になるか、治療期間や金額などについての相談をします。 - 精密診査
歯型をとって模型を作ったり、顔や口の中の写真、顎全体のレントゲン写真などを撮って、治療計画を立てるための参考とします。 - 治療計画の提案
精密診査の結果をもとに、綿密な治療計画を立て、患者さんに提案・説明をしていきます。 - 矯正治療開始
矯正装置を取り付け、治療開始です。同時に歯の磨き方、お手入れの仕方、矯正時の食事の仕方などの説明もあります。 - 定期的な調整
約1ヶ月ごとくらいにワイヤーを取り替えるためなどの目的で通院します。間隔は治療内容によって異なります。 - 矯正装置の取り外し
歯が並んだら矯正装置を外します。しかし、ここで終わりではありません。 - 保定
歯を並べ終わった後、「後戻り」を防ぐために、リテーナーと呼ばれる取り外し式の保定装置を2〜3年装着する必要があります(就寝時など)。数ヶ月ごとくらいに定期的に装置の確認を行います。
矯正治療のリスク
- 矯正装置の装着後及び着脱動作中、歯肉、舌、頬及び唇に、擦り傷又は痛みが生じる場合があります。
- 矯正治療開始直後及び途中に歯の圧痛を経験する場合があります。
- 矯正装置の装着が、一定期間、患者様の発語に影響を与える場合があります。
- 治療過程のいずれかにおいて、咬合状態が変化し、患者様によっては一定期間、不快感を覚える場合があります。
- 治療期間中は、虫歯や歯周病への対策を積極的に行う必要があります。
- 矯正治療を中断した場合でも、治療前の状態に戻すことはできません。