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お子さんの歯の表面がザラザラしている‥先天性エナメル質形成不全とは
お子さんの歯を見て、「白い部分と黄色い部分がある」「なんだか歯の表面がザラザラしている」と感じたことはありませんか?
もしかするとそれは「先天性エナメル質形成不全(せんてんせいエナメルしつけいせいふぜん)」という症状かもしれません。これは、歯の表面を覆う“エナメル質”がうまく作られなかったり、十分に硬くならなかったりすることで起こる先天的な歯の発育異常です。見た目の問題だけでなく、虫歯や知覚過敏など、さまざまなトラブルを引き起こす可能性があるため、早期発見と正しいケアがとても大切です。
エナメル質ってどんな役割があるの?
歯の表面を覆っている“エナメル質”は、体の中で最も硬い組織で、歯を守る「鎧(よろい)」のような存在です。食事中の酸や摩擦から歯を守り、虫歯菌が侵入するのを防いでくれています。
ところが、エナメル質がしっかり形成されないと、その防御力が弱まり、歯がもろくなったり、変色したりしてしまいます。これが「エナメル質形成不全」です。
先天性エナメル質形成不全の原因
この症状は、歯の芽(歯胚:しはい)が作られる妊娠中や乳幼児期の段階で、何らかの影響により正常にエナメル質が作られなかったことが原因です。
主な要因としては次のようなものがあります。
- 妊娠中や出産時のトラブル(栄養不足、胎児の発育不全、早産など)
- 乳幼児期の高熱や感染症
- 栄養バランスの乱れ(特にカルシウムやビタミンDの不足)
- 遺伝的要因(家族に同様の症状がある場合)
近年では、妊娠中のストレスや服薬、環境要因なども関係しているのではないかと考えられています。
どんな症状が見られるの?
先天性エナメル質形成不全の程度は、軽いものから重いものまでさまざまです。代表的な症状には以下のようなものがあります。
- 歯の色が白っぽい、黄色っぽい、または茶色く見える
- 歯の表面がザラザラしている、または欠けやすい
- 冷たいものや熱いものがしみる
- 虫歯になりやすい
- 奥歯の噛む面にくぼみがある
症状が軽い場合は「少し変色しているかな?」程度で気づきにくいこともありますが、重度の場合には歯の形そのものが変形していたり、欠けたりすることもあります。
放置するとどうなるの?
エナメル質が薄い、もしくは存在しない部分は、象牙質(歯の内側の柔らかい組織)が露出している状態です。そのため、虫歯菌が入り込みやすく、通常よりも早いスピードで虫歯が進行してしまいます。
また、歯の表面が凸凹しているため、プラーク(歯垢)がつきやすく、日常の歯みがきでは落としきれないことも。結果として、虫歯や歯肉炎、知覚過敏などを引き起こすリスクが高まります。
特に小さなお子さんの場合、虫歯の進行が早く、永久歯にも悪影響を及ぼすことがあるため、放置せずに早めの受診が必要です。
どんな治療をするの?
治療法は、症状の程度やお子さんの年齢によって異なります。
(1)軽度の場合
変色や軽いザラつき程度であれば、フッ素塗布やシーラント(歯の溝を樹脂で埋める処置)で歯の表面を保護します。これにより、虫歯の予防とエナメル質の再石灰化を促進します。
(2)中等度の場合
表面の損傷が進んでいる場合は、コンポジットレジン(白い詰め物)で補修します。見た目を整えると同時に、歯の保護にもつながります。
(3)重度の場合
歯の大部分が欠けていたり、象牙質が露出している場合は、被せ物(クラウン)で歯を覆います。永久歯で同じような症状が見られる場合には、より耐久性のあるセラミックやジルコニアを使用することもあります。
お子さんの年齢によっては、成長段階に合わせて段階的に治療を行うこともあります。
ご家庭でのケアがとても大切
歯科医院での治療と並行して、日常生活でのケアも重要です。
- 毎日の歯みがきでは、柔らかめの歯ブラシを使って優しく丁寧に磨く
- フッ素入りの歯みがき粉を使用する
- 甘い飲み物やお菓子の摂取を控える
- 定期的に歯科医院でフッ素塗布や検診を受ける
また、歯の見た目に悩むお子さんも多いので、「生まれつきの個性」として受け止めつつ、安心して治療を受けられる環境を整えてあげることも大切です。
永久歯への影響と早期発見のポイント
乳歯にエナメル質形成不全がある場合、後から生える永久歯にも同様の傾向が出ることがあります。特に前歯や第一大臼歯(6歳臼歯)に異常が見られたら、早めに歯科医院で相談しましょう。
定期健診でのチェックや、仕上げみがきの際に歯の色や質感をよく観察しておくことが、早期発見につながります。
「生まれつき歯の表面が弱い?」とご不安な方はお近くの歯医者さんへ!
先天性エナメル質形成不全は、「生まれつき歯の表面が弱い」状態であり、見た目だけでなく、虫歯や知覚過敏のリスクを高める原因にもなります。
しかし、早期に発見し、適切な治療とケアを行えば、十分に健康な歯を保つことができます。
小さなお子さんの歯の変化にいち早く気づいてあげられるのは、毎日そばにいるお母さんです。
「なんだか他の子と歯の色が違うかも?」と感じたら、迷わず歯科医院で相談してみてください。早めの行動が、お子さんの未来の笑顔を守る第一歩になります。