
おじいちゃん・おばあちゃんのための元気!長生き!健口情報!!!
現代の高齢化社会において、健康寿命をいかに伸ばすかが大きな課題となっています。その中でも近年、特に注目されているのが「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」です。高齢者の死因の上位に位置するこの病気は、実は日常の食事や会話、そして口腔内の状態と深く関係しています。
この記事では、誤嚥性肺炎の仕組みや原因、予防方法、そして歯科医院での取り組みについて詳しくご紹介します。
誤嚥性肺炎とは?
「誤嚥(ごえん)」とは、本来ならば食道に送られるはずの食べ物や唾液、胃の逆流物などが、誤って気管や肺に入ってしまう現象を指します。
健康な若年者であれば、誤嚥が起きても咳反射で異物を排出できますが、高齢者や持病を持つ方の場合はその反射機能が低下しており、異物が気管や肺に残ってしまうのです。
その結果、肺の中で細菌が繁殖し、炎症を起こすのが「誤嚥性肺炎」です。特に高齢者に多く、再発しやすく、重症化すると命にかかわることもあります。
なぜ高齢者に多いのか?
高齢者が誤嚥性肺炎にかかりやすい理由は、以下のような身体的・生活的な要因にあります。
- 嚥下機能(飲み込む力)の低下
加齢により舌や喉の筋力が衰えると、食べ物や唾液をスムーズに飲み込めなくなります。その結果、飲み込みが不完全となり、誤って気道に入ってしまうのです。 - 咳反射の低下
肺や喉に異物が入った際に起こる「むせる」「咳をする」といった防御反応が、加齢や神経疾患(例:パーキンソン病、認知症など)によって弱まります。 - 口腔内の細菌増殖
歯磨き不足や唾液の減少により、口腔内に細菌が増加します。誤嚥した際、こうした細菌が一緒に肺に入り込むことで、肺炎のリスクが高まるのです。 - 寝たきり・活動量の低下
体を動かすことが少ないと、筋力全体が低下し、嚥下機能も衰えます。また、寝たきりの状態では唾液が喉に溜まりやすく、知らぬ間に誤嚥しているケースもあります。
誤嚥性肺炎の症状とは?
以下のような症状が見られる場合は、誤嚥性肺炎の可能性があります。
- 微熱が続く(37度前後)
- 食後や就寝中の咳
- 痰の量が増える、色が変わる
- 声がかすれる、ガラガラ声になる
- 息苦しさや倦怠感
- 食欲低下
- 認知症の進行(原因不明の症状悪化)
特に高齢者では、はっきりとした発熱や咳が出ないこともあり、見逃されがちです。日常の中で違和感を覚えた場合は、早めの受診を心がけましょう。
誤嚥性肺炎の予防法
誤嚥性肺炎は、日常のケアと少しの意識で予防できる病気です。以下の対策を取り入れることが重要です。
- 毎日の口腔ケアの徹底
口の中を清潔に保つことが最も重要です。歯や舌に付着した細菌が肺に入ることで感染が起きるため、歯磨き・舌磨き・うがいは欠かせません。義歯(入れ歯)の方は、就寝前に必ず外して洗浄しましょう。 - 歯科医院での定期的なプロフェッショナルケア
歯科医院では、口腔内のチェックだけでなく、専門的なクリーニングや唾液量の測定、嚥下機能の評価なども行います。特に高齢者の方は、3か月に1回の定期検診が推奨されます。 - 嚥下訓練・口腔体操の実施
「パ・タ・カ・ラ体操」や「舌出し運動」などの嚥下体操を習慣にすることで、飲み込む力や咳反射が鍛えられます。食事前に行うことで誤嚥リスクを下げる効果もあります。 - 姿勢の工夫
食事の際は、背筋を伸ばして椅子に深く腰掛け、少し前かがみになる姿勢を意識しましょう。また、食後すぐに横になるのは避け、最低30分は座位を保つことが望ましいです。 - 食事内容の見直し
食べやすい一口サイズにカットしたり、とろみをつけて飲み込みやすくするなど、本人の嚥下機能に合った食事形態にすることが重要です。管理栄養士や歯科医師との連携が有効です。
歯科医院の役割とは?
歯科医院は、「口の中のこと」だけを診る場所ではありません。現在では、誤嚥性肺炎予防の観点からも以下のような重要な役割を担っています。
- 口腔衛生指導
- 舌や歯ぐき、口腔粘膜の状態評価
- 義歯の調整
- 嚥下機能のチェックとリハビリ指導
- 訪問歯科診療による在宅患者の支援
当院では、高齢者の口腔ケアや誤嚥予防に熟知したスタッフが、患者さま一人ひとりに合わせたサポートを行っております。
まとめ
誤嚥性肺炎は、高齢者の方にとって非常に身近でありながら、十分に対策が可能です。
特に日本人にとって「食べること」は人生の楽しみであり、生きることそのものです。楽しく、安心して食事をするためには、口腔内を清潔に保ち、嚥下機能を維持することが何より大切です。
ご本人だけでなく、ご家族や介護に関わる方々も、口腔ケアの大切さを再認識していただき、日常の習慣として取り入れていきましょう。
当院では、予防を第一に考えた歯科医療を提供しています。誤嚥や肺炎が心配な方、飲み込みづらさを感じる方は、どうぞお気軽にご相談ください。